
太陽光発電は、環境負荷を抑えられる発電方式として普及してきました。しかし近年、その裏側で「太陽光パネルの廃棄問題」が注目されています。
とくに、固定価格買取制度(FIT制度)によって普及したパネルが寿命を迎える2030年代には、大量廃棄の時期に入ります。不法投棄や有害物質の流出など、安全面でのリスクが現実的に懸念されています。
こうした問題を避けるには、正しい処分方法や費用の目安を知り、早めに対策を考えることが重要です。本記事では、廃棄問題の実態と今からできる対策をわかりやすく解説します。
太陽光パネルの寿命は25~30年ほどといわれています。日本では2012年7月に固定価格買取制度(FIT制度)が始まり、設置が急速に広がりました。その結果、2030年代に多くのパネルが寿命を迎える見込みです。
資源エネルギー庁の推計によると、排出量は2035〜2037年頃にピークとなり、年間約17〜28万トンに達すると予測されています。これは、産業廃棄物の最終処分量の1.7〜2.7%に相当する規模です。
とくに問題となるのは、短期間に廃棄物が集中することに加え、パネルに含まれる有害物質が環境汚染を引き起こす可能性がある点です。さらに、太陽光発電事業は参入しやすい産業でもあり、廃棄費用を確保していない事業者による放置や不法投棄も懸念されています。
2030年代を迎えるまでに、適切な処分体制と費用確保を進めることが求められています。
出典:資源エネルギー庁「再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルについて」https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/disposal_recycle/pdf/001_02_00.pdf
出典:資源エネルギー庁「太陽光発電設備の廃棄対策について」https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/010_03_00.pdf
太陽光パネルの廃棄が急増すると、環境だけでなく社会や経済にも影響が及ぶ可能性があります。大量廃棄が招く主なリスクを、環境面・社会面・経済面の3つの視点から確認していきましょう。
太陽光パネルの廃棄には費用がかかるため、廃棄費用を準備していない事業者による不法投棄が懸念されています。
住宅の屋根や借地に設置された設備は、所有者が明確であることから放置されにくいと考えられています。一方で問題になるのは、事業者自身の土地に設置した事業用設備です。売電期間が終わり採算が取れなくなった場合、処分費用を回避しようとして設備が放置される可能性があります。
こうした不法投棄や放置が広がれば、地域の景観悪化や住民不安につながるだけでなく、環境汚染などの二次被害を招く恐れがあります。
太陽光パネルには、種類によって鉛やセレン、カドミウムなどの有害物質が含まれています。適切に処理されないまま破損・廃棄されると、土壌や水質の汚染につながり、人体や生態系に悪影響を及ぼす可能性があります。
本来、有害物質を含むパネルは、水漏れ防止対策を備えた「管理型最終処分場」で処理する必要があります。しかし、パネルに含まれる成分情報が処理業者に正しく伝わっていないケースがあり、不適切な処分場で処理されてしまう事例も指摘されています。
背景として、排出した事業者が有害物質の含有を把握していない、または確認を怠っていることが挙げられます。さらに、災害でパネルが破損した場合にも、有害物質の流出や感電の恐れがあるため、専門業者による迅速で適切な対応が求められます。
太陽光パネルの廃棄量がピークを迎える頃には、産業廃棄物の最終処分量の1.7〜2.7%に達すると予測されています。とくに有害物質を含む可能性があるパネルは、一般の安定型処分場では処分できず、漏水対策が施された「管理型最終処分場」での処理が必要です。
しかし、管理型処分場には受け入れ容量の限界があります。短期間に廃棄が集中すれば、処分能力を超えてしまい、適切な処理が追いつかない可能性があります。その結果、処分待ちの増加や不法投棄を誘発するリスクも高まります。
こうした事態を防ぐには、再使用できるパネルのリユースや、素材を再生するリサイクルを進め、最終処分に回る量を減らすことが重要です。同時に、処理設備の拡充や新たな処分場の確保も検討すべき課題となっています。
出典:資源エネルギー庁「再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルについて」https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/disposal_recycle/pdf/001_02_00.pdf
太陽光パネルには、アルミニウムや銀などの有価金属が含まれています。さらに、CIS系パネルでは、インジウムやガリウム、セレンといったレアメタル(希少金属)が使われています。
これらは貴重な資源であり、本来はリサイクルによって再利用が可能です。しかし、適切に回収されず埋立処分されてしまうと、資源がそのまま失われてしまいます。
とくにレアメタルは供給量が限られ、価格変動のリスクも高い資源です。太陽光パネルから効率よく回収できる技術が普及すれば、資源確保と環境保護の両面で大きな効果が期待できます。そのため、廃棄対策と並行してリサイクルを推進することが重要です。
太陽光パネルの大量廃棄に備え、国や業界では対策が進められています。 ここでは、現在取り組まれている主な対策を紹介します。
太陽光パネルを適切に廃棄するためには、事業者が確実に処分費用を確保する仕組みが必要です。FIT制度の買取価格には廃棄費用が含まれていましたが、実際に積立を行っていない事業者も多い状況でした。
こうした課題を受けて、2022年7月から「廃棄等費用積立制度」が導入されています。対象は10kW以上の事業用設備で、売電収入から廃棄費用が自動的に控除され、電力広域的運営推進機関に積み立てられる仕組みです。
外部で確実に積み立てることで、事業終了時に廃棄処理が確実に行われることが期待されています。さらに、事業者には積立計画や進捗報告が義務づけられ、制度の実効性を高める取り組みも進んでいます。
出典:資源エネルギー庁「太陽光発電設備の廃棄等費⽤積⽴制度について」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fip_2020/fip_document03.pdf
太陽光パネルに含まれる有害物質を適切に処理するには、メーカーから処理業者へ正確な情報が伝わることが欠かせません。
そのため、太陽光発電協会(JPEA)は2017年12月に「使用済太陽電池モジュールの適正処理に資する情報提供のガイドライン」を策定しました。このガイドラインでは、メーカーや輸入販売業者が、有害物質の種類や含有量、適切な処理方法などを産業廃棄物処理業者へ積極的に提供することを求めています。
情報が共有されれば、処理業者は適切な処分場や手順を選び、安全に廃棄処理を行うことができるようになります。
出典:一般社団法人太陽光発電協会「使用済太陽電池モジュールの適正処理に資する情報提供のガイドライン」https://www.jpea.gr.jp/wp-content/themes/jpea/pdf/t171211.pdf
太陽光パネルの廃棄は、廃棄物処理法により排出事業者の責任とされています。事業者には、適切な処理の実施に加え、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の運用や、委託先の確認といった義務が課されています。
FIT制度における廃棄等費用積立制度は、この排出事業者責任を確実に果たすための仕組みです。責任が明確になることで、不法投棄や不適切な処理の抑止効果が期待されています。
循環型社会形成推進基本法では、再使用(リユース)を優先し、再生利用(リサイクル)、最終処分(埋立)は最後の手段と位置づけられています。
実際に、メガソーラーで高効率パネルへ交換が行われた際、使用済みパネル約8,000枚がリユース可能と判断され、別の発電事業者によって再使用された事例もあります。
リサイクル面では、ガラスやアルミ、銀などの金属を回収する技術開発が進んでいます。環境省と経済産業省も実態調査を進めており、制度整備について検討が始まっています。2030年代の大量廃棄を見据え、技術と制度の両面で取り組みの加速が求められています。
こちらの記事では、太陽光パネルのリサイクルについて解説しています。 現状の課題や方法も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
太陽光パネルの廃棄時期は、状況によって異なります。適切なタイミングを把握しておけば、安全面と経済面の両方で無駄がありません。
太陽光パネルの耐用年数は、およそ25~30年とされています。発電効率の大幅な低下や、故障・破損が見られる場合は、交換や廃棄の時期と考えられます。
FIT制度の買取期間満了後は売電価格が大きく下がるため、採算性が低下します。事業を終了し、設備を撤去するタイミングとして選ばれるケースが多く見られます。
台風や地震などで破損したまま放置すると、感電や有害物質の流出につながるおそれがあります。発見したら、速やかに専門業者へ対応を依頼する必要があります。
建物の解体や屋根の大規模修繕など、建物側の理由で廃棄が発生する場合もあります。屋根に設置されたパネルは、建物の解体や大規模修繕の際に撤去が必要となるため、建物の寿命やメンテナンス計画に合わせて処分のタイミングが訪れます。
太陽光パネルの廃棄には、専門的な知識と適切な処理手順が必要です。安全に廃棄するための基本的な流れを順番に見ていきましょう。
太陽光パネルの廃棄を検討し始めたら、まずは専門業者に相談します。購入した販売店や施工業者、メーカー窓口に問い合わせるのが一般的です。
相談時には、必ず複数の業者から見積もりを取得しましょう。費用やサービス内容に差があるため、比較することで適切な業者を選べます。見積もりを依頼する際は、費用の内訳が明確か、必要な許可を取得しているか、リサイクル対応の実績があるかなどを確認することが重要です。
業者が決まったら、専門スタッフによる現地調査が行われます。調査では、パネルの枚数や設置場所(屋根・地上)、屋根材や架台の状態、搬出経路、有害物質の有無などを確認します。
この調査結果をもとに、作業内容と費用が具体化されます。設置状況によって必要な機材や作業難易度が大きく変わるため、正確な見積もりに欠かせない工程です。
現地調査の内容をもとに、正式な見積もりが提示されます。見積もりには一般的に、撤去作業費、収集運搬費、処分費、撤去後の補修費用などが含まれます。
費用は、設置場所やパネルに有害物質が含まれるかどうかで大きく変動します。屋根上に設置されている場合は、足場の設置が必要になることもあり、追加費用の発生につながります。
見積もりは費用内訳をよく確認し、不明点は必ず質問しましょう。追加費用が発生する可能性についても、事前に確認しておくことが重要です。
契約後、専門業者による撤去作業が始まります。まずは感電事故を防ぐため、パワーコンディショナーの停止や配線の取り外しなど、電力系統を遮断して安全を確保します。
屋根上の場合は、足場や養生シートを設置してからパネルを取り外します。取り外したパネルは発電を防ぐため、受光面を下向きにするか遮光シートで覆うのが一般的です。
撤去したパネルは分別・保管され、リユースが可能なものと、リサイクルまたは処分が必要なものに選別されることもあります。
太陽光パネルの廃棄では、排出事業者に「産業廃棄物管理票(マニフェスト)」の交付と運用が義務付けられています。マニフェストは、処理の流れを追跡し、適切に廃棄されたことを証明するための書類です。
FIT認定事業者の場合は、事業終了予定時期の記載や廃止届の提出、さらに撤去後のマニフェスト提出が求められます。電子マニフェストを利用すれば、手続きを効率的に進められます。
こうした手続きを適切に行うことで、法令遵守と排出事業者としての責任を果たすことにつながります。
撤去された太陽光パネルは、原則としてリユース、リサイクル、最終処分の順に処理されます。リユース可能なものは、中古市場で再販売されたり、別の発電設備で再利用されたりします。
リサイクルでは、ガラスやアルミ、銅、銀などの資源が回収されます。環境省のガイドラインでも、適切な処理による資源活用が示されています。
一方、リサイクルが難しい部材や有害物質を含む部分は、管理型最終処分場で埋立処分されます。このような段階的な処理によって、環境負荷を抑えながら廃棄が行われます。
出典:環境省「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン 」https://www.env.go.jp/content/000245687.pdf
太陽光パネルの廃棄費用は、設置環境や作業内容によって変動します。まずはおおよその費用と注意点を押さえておきましょう。
【費用の平均】
太陽光パネルの廃棄費用は、資源エネルギー庁の調査によると、1kWあたりの中央値は次のとおりです。
【50kW設備の場合の目安】
事業用で多い 50kWシステムの場合は、約100万円が目安です。 ただし、設置状況によって費用は変動します。
【費用に含まれる主な項目】
【追加費用がかかりやすいケース】
【FIT 認定設備の場合】
10kW以上の FIT 設備では、廃棄費用を事前に確保する「廃棄等費用積立制度」が設けられています。事業者が別途積み立てを行う必要はなく、調達価格や売電量にもとづいて設定される金額が計画的に確保される仕組みです。
出典:資源エネルギー庁「太陽光発電設備の廃棄等について」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/community/dl/06_06.pdf
廃棄費用は業者によって差が出やすいため、複数の業者に見積もりを依頼して内容を比較することが重要です。費用の内訳が明確であるか、追加料金が発生する条件がないかを事前に確認しておくと、無駄なコストを避けやすくなります。
太陽光パネルの廃棄問題は、2030年代に大量廃棄のピークを迎えることが予測されており、早急な対策が求められています。不法投棄や有害物質による環境汚染を防ぎ、資源を再利用できる体制づくりが重要です。
安全に廃棄処理を行うには、信頼できる専門業者への依頼が欠かせません。
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