
次世代の太陽光エネルギーとして関心を集めるペロブスカイト太陽電池は、薄くてコンパクト、柔軟性があるといった特性・利点を持ち、あらゆる箇所へ設置可能です。
また、電気代削減や環境負荷低減に貢献する可能性を秘めており、日本国内の企業をはじめ、世界中で研究・開発が進められています。
本記事では、概要や利点・欠点、実用化の見通しなどを分かりやすく解説します。太陽光エネルギーシステムに関心をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
ペロブスカイト太陽電池は、国内研究者が開発した日本発の次世代太陽光エネルギー技術として関心を集めています。
ペロブスカイト(perovskite)は、酸化鉱物の一種で灰チタン石を意味しており、その結晶構造を持つものを総称してペロブスカイトと呼びます。そして、その結晶構造を持つ化合物を用いた太陽光エネルギーシステムこそ「ペロブスカイト太陽電池」です。
ペロブスカイトの構造を持つ材料は、光を効率的に吸収し電気に変換する性質があります。そのうえ、薄くてコンパクト、柔軟性があるといった利点を持ち、既存のシステムでは設置が難しい場所にも設置可能です。
主原料にはヨウ素が使われており、日本はヨウ素の主要生産国で世界第2位の生産量を誇り、世界シェアの2割以上を占めています。貴重な国産天然資源であり、原材料の安定供給が可能です。
近年では、システムの研究・開発において、ヨーロッパや中国を中心に技術開発戦争が激化している状況です。
しかし、日本は原料が豊富であることに加え、ヨウ素の精製技術や製造に必要な精密化学技術など、ハイテクノロジーな企業が多数存在しています。そのため、世界最高水準に位置し、製品化のカギとなる大型化や耐久性の分野でも、先駆けています。
現在は、研究開発段階から実証実験段階へ移行中ですが、一部企業では実用化も始まっており、近い将来本格的な普及が見込まれています。
普及すると、エネルギー問題の解決やカーボンニュートラルの実現、新たな産業の創出や経済活性化、生活の質の向上など、あらゆる変化が期待できるでしょう。
※出典:経済産業省資源エネルギー庁「日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(前編)~今までの太陽電池とどう違う?」(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/perovskite_solar_cell_01.html)
ペロブスカイト太陽電池と既存のシステムは、材料・製造方法・特性など、あらゆる違いがあります。
ペロブスカイト太陽電池の材料は、薄膜構造で軽く、柔軟性のあるペロブスカイトの結晶構造を持つ化合物を用いています。製造方法は、塗布や印刷など比較的簡単なプロセスのため、製造コストも削減できる傾向にあります。
軽くて柔軟性が高くあらゆる場所に設置が可能、製造コストが押さえられるといった利点がある一方、現在はまだ一部企業で実用化が始まったところで、一般普及はしていません。
対して、従来の太陽電池システムの材料は、厚く硬い構造のシリコンを用いています。製造方法は、高温真空プロセスが必要なため、製造に時間がかかる傾向にあります。
大型で重量があるため設置箇所は限られているうえに、製造コストも高いですが、すでに広く普及しており技術が成熟しているため、高い変換効率や長期安定性が期待できます。
※出典:国立研究開発法人産業技術総合研究所「ペロブスカイト太陽電池の研究開発動向」(https://unit.aist.go.jp/rpd-envene/PV/ja/results/2019/oral/T1.pdf)
こちらの記事では、太陽光発電のメリット・デメリットを解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
令和6年3月に環境省によってまとめられた記事によると、2025年中の実用化を目指しています。政府は、2020年代年央に100MW/年規模、2030年を待たずにGW級の量産体制が構築されることを前提に、政府施設への導入目標を検討しています。
※出典:環境省 資料「政府施設におけるペロブスカイト太陽電池の率先導入に向けて」 (https://www.env.go.jp/content/000211383.pdf)
また、モデルハウスや自社工場などで実証実験を実施している企業もあり、2025年以降には本格的に実用化することが期待できます。
次世代の太陽光エネルギーシステムとして高い関心が集まっているのは、既存のシステムにはないあらゆる利点があるためです。以下では、各利点について詳しく解説します。
利点のひとつに挙げられるのが、製造コストが低いという点です。非常に薄い素材のため材料費がかなり抑えられるうえ、インクのように塗布や印刷技術での量産を可能にします。材料費は従来の太陽電池の20分の1程度で、製造工程も簡素化されるため、製造時間の短縮が可能です。
また、薄くてコンパクトなため、輸送や設置にかかるコストも抑えられます。これらの理由から、量産化できれば既存のシステムの30〜50%程度のコストに抑えられると見込まれています。
量産化されれば、既存のシステムより発電コストが抑えられます。現在、ペロブスカイト太陽電池は世界的に開発競争が激化しており、2024年11月にはエネルギー効率が26.7%にまで向上しました。これは、現在主に使用されている結晶シリコンを上回る数字です。
また、経済産業省の試算では、2040年の目標発電コストは15円/kWh台半ば(政策経費を含まず)とされており、海外の需要を取り込めれば、10円/kWh水準も視野に入れています。
※出典:経済産業省「次世代型太陽電池戦略」 (https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/perovskite_solar_cell/pdf/20241128_1.pdf)
燃料価格の高騰などの影響により、電気代の高騰は続いており、日本のエネルギー問題は深刻化しています。現在は、本格的な実用化に向けた取り組み段階ですが、一般化すれば日本のエネルギー問題の解決に大きく貢献してくれるでしょう。
革新的である理由のひとつに、レアメタルを使わないという点が挙げられます。レアメタルは、その名のとおり希少金属を指し、地球上に存在する量が少ないもの、または技術や経済的な理由から抽出が困難な金属のことです。
具体的には、リチウム、コバルト、ニッケル、マンガン、白金、パラジウムなどがあり、約30種類が該当します。現在のシステムの主流はシリコン系ですが、化学物系(CISなど)では、インジウムやガリウム、セレンといったレアメタルが使用されています。
レアメタルは日本国内ではほとんど産出されないため、輸入に頼らざるを得ません。そのため、不安定な供給や価格変動のリスクがあります。
一方で、ペロブスカイト太陽電池はレアメタルを使用しないため、資源リスクやコスト、環境負荷の低減にも貢献できる、持続可能な技術です。
既存のシステムにはない、やわらかく柔軟性が高いという特性は、大きな利点のひとつです。現在の主流であるシリコン系は、硬いシリコン基板を使用しているため曲げられず、設置箇所は平面に限られています。そのため、システム設置のために森林を伐採したり、架台を設置したりする必要がありました。
対するペロブスカイト太陽電池は、やわらかく曲がりやすい材質のため、曲面や凹凸のある場所、折り畳みするものなど、あらゆる場所・形状に設置可能です。
既存のシステムでは設置できなかった建物の壁側や窓ガラス、車のボディなどにも設置できるだけでなく、衣類やバッグなどにも組み込め、デザイン性の向上が図れます。
やわらかく曲がりやすいという特性は設置箇所の自由度を高めるだけでなく、新たな用途・市場の開拓にもつながるでしょう。
やわらかく曲がりやすいだけでなく、コンパクトで薄い点も利点です。重さは、シリコン系が62.5g/Wであるのに対し、ペロブスカイト太陽電池は2.5g/Wと、約25分の1の重さです。厚みは、シリコン系が30〜40mm程度であるのに対し、ペロブスカイト太陽電池は30μm程度で、約100分の1の厚さです。
※出典:株式会社エネコートテクノロジーズ「ペロブスカイト太陽電池で目指すグリーンエネルギー社会の実現」(https://www.jst.go.jp/mirai/jp/uploads/230221-wakamiya.pdf)
システムに重量があると、屋根などの耐久性に影響を与えることがあり、築年数の長い木造住宅や耐用年数の短い屋根では、システムの重量により劣化したり耐震性が低下したりする恐れがあります。
一方で、コンパクトで薄いペロブスカイト太陽電池は建物の構造や耐久性への影響も最小限に抑えられます。
結晶の主原料であるヨウ素は、日本国内で採掘可能です。日本はチリに次ぐ世界第2位のヨウ素生産国で、世界の生産量の2割以上を占めており、千葉県や新潟県、宮崎県などで生産されています。
すべての材料を国内調達できるわけではありませんが、主な材料を国内調達できるということは、海外からの輸入に依存する必要性が少なく、供給網の安定化につながります。
これにより国際情勢や為替による価格変動リスクを抑えられ、輸入コストの削減といった利点も期待できます。
既存のシステムは、太陽光の強さによってエネルギー量が決まるため、光が弱い状況では大幅に低下します。そのため、曇りや雨の日、朝方や夕方には思うような電力が得られません。また、室内光では実用的な電力を得ることはほぼできないでしょう。
対するペロブスカイト太陽電池は、室内光のような弱い光でも電力が得られるため、室内機器の電源など、あらゆるシーンでの活用が期待できます。
現在主流のシリコン系は、製造時の温度が1400℃と高温であるため、CO2が多く排出されてしまいます。対するペロブスカイト太陽電池は、100℃と低温で製造できるため、製造時のCO2排出量が削減できます。
一般化されれば、地球温暖化対策やエネルギー安全保障、環境保全に大きく貢献するでしょう。
既存のシステムは光を透過しないため、発電と採光の両立はできません。しかし、ペロブスカイト太陽電池は光を透過する特性を持っており、この特性によりあらゆる用途への応用が期待できます。
たとえば、窓ガラスに設置が可能なため都市部の建物など、設置箇所が限られている場所への導入も可能です。また、ビニールハウスの屋根に設置すれば、作物に必要な光を透過させつつ、発電できます。
自動車のサンルーフや窓に設置できるようになれば、走行に必要な電力を太陽エネルギーで補える可能性が高まります。
既存のシステムにはないあらゆる特性・利点を持っていますが、いくつか欠点も存在します。以下では、主な欠点について解説します。
既存のシステムに比べて、寿命が短い傾向にあります。なぜなら、湿度や熱・紫外線などの影響を受けやすく劣化しやすいためです。
寿命の短さは開発当初からの懸案事項のひとつで、実用化に向けて取り組むなかで封止技術や材料の改良により、徐々に寿命が長いものも開発されています。そのため、将来広く普及するころには、従来のシステムと同様の寿命が期待できます。
材料の構成要素に鉛が含まれており、廃棄時や漏洩時の安全性が懸念されています。鉛は、人体に有害な物質です。具体的な人体へのリスクは、成分が蓄積することにより神経系や腎臓などに悪影響を及ぼす可能性が挙げられます。
また、人体に直接影響を及ぼすことがなくても、鉛が土壌や地下水に流出すると環境汚染を引き起こすリスクも考えられるでしょう。
そのため、開発する企業は、鉛を含まない材料の開発や、鉛を安全に封じ込める技術を開発しています。
現状の懸案事項には、性能が不安定になりやすいという点も挙げられます。エネルギー効率が外部環境によって変動しやすく、寿命の項目でも挙げたとおり、湿度や熱・紫外線などに弱いです。
とくに、吸湿性は懸案事項のひとつで、水分を吸収することで結晶構造が変化し、エネルギー効率が低下します。そのため、水分から保護するための封止技術の開発や、水分の侵入を防ぐ構造の検討が行われています。
レクソルでは、屋根に取り付ける太陽光発電システムを取り扱っております。環境に配慮したクリーンなエネルギーをお探しの方は、ぜひご相談ください。
次世代の太陽光エネルギーシステムとして世界中で研究・開発が行われています。以下では、日本企業における技術開発事例を4社紹介します。
積水化学工業株式会社は、住宅・管工機材・高機能プラスチックなどを製造する大手化学メーカーです。
株式会社NTTデータと共同で、フィルム型ペロブスカイト太陽電池を建物の外壁に設置した国内初の実証実験を2023年4月から開始しました。また、2024年2月にはスロバキア共和国と共同検討実施に関する覚書を締結し、国内だけでなくグローバルな連携を強化しています。
2024年5月には、東京国際クルーズターミナルへのフィルム型システムの設置が完了し、国内最大規模となる湾岸施設での検証を開始しました。耐風圧や塩害に対する耐久性を確認し、実用化に向けた取り組みを加速させています。
※出典:積水化学工業株式会社「国内初、ペロブスカイト太陽電池を建物外壁に設置した実証実験開始」(https://www.sekisui.co.jp/news/2023/1384297_40075.html)
※出典:積水化学工業株式会社「スロバキア共和国とペロブスカイト太陽電池の共同検討実施に関する覚書を締結」(https://www.sekisui.co.jp/news/2024/1399372_41090.html)
※出典:積水化学工業株式会社「東京都との港湾施設における国内最大規模のフィルム型ペロブスカイト太陽電池の検証について」(https://www.sekisui.co.jp/news/2024/1403365_41090.html)
株式会社カネカは、化粧品や機能性樹脂・食品・ライフサイエンスなど多岐にわたる事業を展開する大手総合化学メーカーです。
自社設計のポリイミドを基板に用い、薄膜シリコン太陽電池の量産技術を活用して、世界最薄水準の超薄型ペロブスカイト太陽電池を開発しています。
また、既存の量産技術の応用により、電極層やペロブスカイト層の形成、配線、封止といった製造プロセスを確立し、開発を通じて高い変換効率の実現にも成功しました。
変換効率20%に迫る高性能を実現しており、今後も「サイズフリー・超薄型」の特長を活かした社会実装を目指しています。
※出典:株式会社カネカ「カネカ 高性能ペロブスカイト太陽電池の実用化技術開発を加速」(https://www.kaneka.co.jp/topics/news/2022/nr2203161.html)
株式会社アイシンは、自動車部品を主力とする日本の大手メーカーです。近年では、自動化や知能化を重点領域とし、カーボンニュートラルの実現に向けて、ペロブスカイト太陽電池の開発・研究も進めています。
株式会社アイシンのシステムは、素材に酸素や水を通しにくい薄板ガラスを使用し、耐久性を高めています。
また、有機半導体はグループ会社のイムラ・ジャパン株式会社と共同で合成した独自の材料を使用しています。材料、工法の改良を重ね耐久性とともに変換効率の向上や大面積モジュール化・量産化を目指しています。
※出典:株式会社アイシン「【5分でわかる】塗って発電!?ペロブスカイト型太陽電池とは」(https://www.aisin.com/jp/aithink/innovation/blog/006006.html)
株式会社エネコートテクノロジーズは、ペロブスカイト太陽電池の開発・製造を行う京都大学発のスタートアップ企業です。
自社が開発するシステムは、晴天時以外も高いエネルギー能力を発揮し、柔軟性や軽量化に優れていることから「どこでも電源®」と命名されています。
また、塗布型システムの技術開発に強みを持ち、2025年3月には三菱マテリアル株式会社との共同研究で、システムを構成する電子輸送層の塗布タイプ成膜用インクを開発しました。既存型のインクより約1.5倍の高エネルギー効率を実現します。
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業にも採択され、技術開発を加速させています。
※どこでも電源®は株式会社エネコートテクノロジーズの登録商標です。
※出典:株式会社エネコートテクノロジーズ 公式サイト(https://enecoat.com/)
日本発の次世代太陽光エネルギーシステムとして関心を集めているペロブスカイト太陽電池は、薄くてコンパクト、光を透過するなどといった既存のシステムにはない特性・利点を持つことから、あらゆる場所への設置が可能です。
しかし、有害物質の含有や短い寿命、性能の不安定さなど克服すべき懸案事項も残されており、現段階では本格的な実用化に向けて国内外で精力的な研究・開発が進められています。
ペロブスカイト太陽電池は世界的に開発競争が激化していることから、政府も率先導入に向けて2025年中には、新たな動きがあることが見込まれます。
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