低燃費で地球環境に配慮したエコカーとして注目されている電気自動車を、街中で見かける機会も多くなったのではないでしょうか。地球温暖化の原因とされる、温室効果ガスのひとつであるCO2の排出は、化石燃料のガソリンを燃やして走行するガソリン車では避けられませんでした。
しかし、電気のみで動く電気自動車やガソリンと電気で動くハイブリッド車の登場により、環境への負荷が小さくなることが期待されています。また、騒音や振動の少ないスムーズな走行であることから、快適な運転ができると選ばれています。
そんな電気自動車は、自宅で充電できることもメリットのひとつです。本記事では、電気自動車を充電する設備の種類や特徴、自宅に充電設備を整えるメリットや費用について詳しく紹介します。
充電設備には、普通充電と急速充電という2種類の充電方法があります。高速道路のサービスエリア・パーキングエリアや、ガソリンスタンド、コンビニなどに設置されているのは、急速充電器で設備が大型で高出力なことが特徴です。
一方、自宅に設置できるのは普通充電で、急速充電器よりも充電スピードはゆっくりですが、小型で設置しやすい特徴があります。そして普通充電のなかにも、コンセントタイプ、スタンドタイプ、V2H機器の3種類に分かれており、それぞれ特徴があります。では、ひとつずつ特徴を紹介します。
最も主流となっている自宅充電設備が、家の壁面などに取り付けるコンセントタイプです。その名のとおり、コンセントから充電するもので、電気自動車に標準装備されている充電用ケーブルを繋いで充電します。比較的簡単に取り付けられ、本体費用や工事費用が安い特徴があります。
そのほかにも、充電器本体に充電ケーブルが付いており、充電用コネクターを車の充電口に差し込むだけで充電できるタイプもあります。
駐車スペースと建物の距離が離れている場合や、壁付けが難しい場合に採用される充電設備が、スタンドタイプです。
スタンドの建柱工事が必要になるため、コンセントタイプより本体費用や工事費用が高くなる反面、設置できる場所が比較的自由になるメリットがあります。また、複数の車を同時に充電できる製品もあるのが特徴です。
V2HはVehicle to Home(=車から家へ)の略で、電気自動車のバッテリーに充電するだけではなく、バッテリーに貯めた電気を家庭で使用できるようにするシステムのことです。
停電時にバッテリーを非常用電源として使用することが可能なため、災害などの対策としても有効です。コンセントタイプやスタンドタイプと比べて、充電時間が短い特徴がありますが、ほかの充電設備よりも導入費用が高いのはデメリットといえるでしょう。
ガソリン車の場合、燃料が少なくなったら街中のガソリンスタンドで給油しますが、電気自動車の場合は、家電やスマホのように充電設備から充電します。
充電方法として、ガソリンスタンドやコンビニなどに設置されている充電スポットを利用することもできますが、自宅に充電設備を整えることをおすすめします。
なぜ自宅に充電設備を整えることがおすすめなのか、その理由や設置することで得られるメリットを紹介します。
自宅に設置できる普通充電の出力は約3〜6kWが一般的で、出力を3kWとした場合、1時間で充電できるのは3kWhです。たとえば40kWhのバッテリーを搭載した車を、電池残量10%の状態から満充電するには12時間かかる計算です。
自宅で充電できれば、自分のタイミングでこまめに充電ができ、就寝している時間を利用すれば、朝には充電が完了しています。空いている時間を利用して充電できるのは、自宅で充電する大きなメリットといえるでしょう。
充電スポットを利用する場合、場所や時期によって混むため、充電の順番待ちをしなければなりません。とくにお盆や年末の直前などは、長蛇の列になっていたり、お店が営業していなかったりと、困った経験がある人も少なくないはずです。
自宅で充電できる設備を整えれば、自分のライフスタイルに合わせたタイミングで、好きなだけ充電が可能になります。給油のために出かける手間や、混雑の順番待ちをするストレスが軽減するでしょう。
電気自動車はガソリン車よりもお得ですが、自宅で充電する場合、ライフスタイルに合わせて夜間の電気代が安くなるプランを選択したり、電力使用量に応じてポイントをもらえるサービスに加入したりすることで、電気代を抑えられます。
また、太陽光発電などの自家発電設備による電力も活用できるため、外で充電をするよりも節約できるメリットがあります。
時間を有効活用できることや、電気代を節約できることから、自宅に充電設備を整えることをおすすめしました。しかし、注意しておかなければならないこともあります。ここでは、自宅で電気自動車を充電する際に注意しておきたいポイントを紹介します。
充電スポットにある急速充電器は、30分程度で約80%近くの充電ができるのに比べ、自宅に設置できる普通充電は、満充電するには何時間も掛かります。急ぎで充電をしたい場合や、充電できる時間が短い場合は、長い充電時間がデメリットといえます。
しかし日本国内の急速充電器の多くは、1回で利用できる時間が原則、最大30分というルールが定められています。また、設置されている急速充電器によって出力が異なることから、一回の充電で満充電近く充電できない可能性もあります。
そのため、自宅での充電では、時間が許せば満充電まで確実に完了できるメリットもあります。とはいえ、それには長い時間がかかることを念頭に置いておきましょう。
一戸建て住宅の場合、自宅での充電設備の取り付けは自由に行えますが、住まいが集合住宅の場合、マンションのオーナーや所有者、管理会社などの同意を得られない限り、設置ができません。自分の判断で充電設備を取り付けることはできないため、集合住宅住まいの人は注意が必要です。
また、雨や雪のなかでも充電できますが、安全に使用するために電源プラグ・充電コネクターを濡らさないことや、充電ポートカバーを使用するなどの工夫が必要です。雨や雪、雷などの自然災害を受けやすい地域は、とくに注意しましょう。
自宅に電気自動車の充電設備を取り付けるには、工事が必要になります。実際に設置する際は、施工業者に見積もりを依頼し、事前に現地調査をします。まずは、どのような工事が必要か把握しておきましょう。
自宅に充電設備を取り付ける場合、使用する電力が増えることから通常のブレーカーでは落ちてしまうため、専用の漏電ブレーカーの設置が必要です。使用する容量は車種などによって異なりますが、20Aから30Aをおすすめされている傾向があります。
また新しく電気設備を取り付けるため、現在の電力プランを見直す必要も出てくると考慮しておくとよいでしょう。夜間の電気料金が安いプランや、電気の使用量に応じて料金が変更されるプランなど、利用環境に応じた料金プランを選ぶことで節約にもつながります。
充電設備の取り付けは、設置環境や状況によって、配管の敷設や隠密配線工事などの電線配線工事が必要になります。
必要になる配線の長さなどは、工事業者による現地調査をしなければ正確には知ることはできません。また、配線の距離によって工事費用も変動するので、詳細については現地調査に立ち会って確認するようにしましょう。
漏電ブレーカーの設置と配線の敷設工事のほか、充電用機器本体の設置工事も必要です。この充電用機器は、コンセントタイプ、スタンドタイプ、V2H機器の3種類からどれを選択するのかによって、本体費用だけでなく設置時間も変わってきます。
費用は種類によって大きく差が出るため、予算に合わせた機器を選ぶことが大切です。設置時間は本体の種類だけでなく、自宅の配電方式や駐車スペースによっても異なるため、現地調査のときに施工業者に確認するとよいでしょう。
実際に充電設備を取り付ける際には、設置依頼・現地調査・取り付け工事が必要となります。建物や駐車スペースなど、設置する環境によっては追加工事が発生することもありますが、今回は標準的な設置工事の流れを紹介します。
電気配線工事は、専門の資格や技術を持つ工事業者に依頼する必要があります。電気自動車を購入した販売店から工事業者を紹介してもらうほか、自分で探して工事を依頼することも可能です。
取り付け工事だけではなく、電気料金のプランに詳しい業者を選ぶことで、設置後のトラブルを防げます。業者選定の際は、充電設備の施工経験が豊富であるかに注目して選びましょう。
工事業者を選定したら、次は見積もりを依頼し、現地調査を行います。現地調査では、自宅の設置環境、配線の長さ、分電盤の位置など、充電設備を取り付ける際に必要な情報を事前に確認します。
そのうえで、コンセントの設置場所や分電盤からコンセントまでの配線ルート、追加工事の有無を決定します。要望や相談があれば、現地調査の際、業者に伝えておくことが大切です。
現地調査後、工事内容や費用を記した見積りを確認し、契約を結んで工事の日時を決定します。充電用機器本体の種類や設置場所の環境によって、費用だけでなく工期も違うため、あらかじめ確認のうえ契約を結ぶようにしましょう。
また、近隣へのご挨拶など、工事中に考えられる不安点などはしっかり相談しておきましょう。
本工事では、専用ブレーカーの設置・配線の敷設・充電用コンセントの設置を行います。電圧のチェックや充電器の指導テストなども含めて、数時間~半日程度で完了します。
工事が終了したら使い方や注意説明を受け、今後充電器を使うにあたっての疑問点は解消しておきましょう。
自宅に電気自動車の充電設備を取り付ける際、一番気になるのは設置にかかる費用ではないでしょうか。主流となっているコンセントタイプの場合、費用も設置工事込みで10万円程度と、比較的リーズナブルです。
スタンドタイプの場合は本体だけで20万円以上、V2H機器の場合は本体だけで約50万〜100万円以上かかります。そこに設置する場所までの距離や配線の長さなどによって、4万~12万円前後の設置工事費が上乗せされます。
ここまで自宅充電設備の種類や費用について説明しましたが、どれを選べばいいか悩まれる方は多いでしょう。
車を購入した販売店や、工事業者など専門知識を持った人に相談することは非常に重要ですが、利用環境によって選ぶポイントが変わるので、事前に理解しておくと相談もスムーズになります。では、タイプ別特徴のおさらいと充電設備の選び方を紹介します。
コンセントタイプは、最もシンプルで安価に取り付けが可能なため、ほかの種類に比べ導入しやすい充電設備です。また、壁に取り付けるので、設置スペースが狭くても取り付けでき、駐車スペースが狭い人や費用を抑えたい人におすすめです。
さらに、鍵付きのタイプやボックスタイプなどもあり、ケーブルを収納できます。そのため、外観をそこねることもありませんし、防犯対策や汚れ防止にもなります。
最近では、新築するときに充電用コンセントを設置しておく住宅もあり、その多くがコンセントタイプです。家を建てると同時に充電設備を検討している人は、工事の手間が減るため、一度相談してみるといいでしょう。
スタンドタイプは、商業施設で多く見受けられるタイプで、設置場所が比較的自由に取り付けられます。そのため、駐車スペースと建物の距離が離れている住宅構造の人や、商業施設で使い慣れている人におすすめです。
また、充電ケーブルの出し入れが不要のため、力の弱い方や、妊娠中の方、ケガをしている方、歳を重ねた方でも簡単に充電できます。そのほかにも、一度に複数充電できる製品もあるため、車を多く所持している人や利用する家族が多い人にもおすすめです。
V2H機器はほかの種類に比べ高額ですが、ほかの普通充電設備に比べ、約半分の時間で充電できます。そのため出勤時間が早い、帰りが遅いなど、充電時間をできるだけ短くしたい人におすすめです。
また、バッテリーに貯めた電気を家庭で使用できたり、非常用電源として使用できたりするため、節約や災害対策に利用したい人にもおすすめです。
近年では、太陽光発電で生み出した電力を使用できるものもあり、すべて太陽光発電で蓄えた電力でまかなうことができれば、電気代はかかりません。太陽光発電を利用している方や今後使用を検討している方は、相談してみるとよいでしょう。
こちらの記事では、住宅用太陽光発電の仕組みをわかりやすく解説しています。太陽光発電が持つ多くの特徴にも触れているので、ぜひあわせてご覧ください。
自宅に電気自動車の充電設備を取り付けるのは、お金も費用もかかります。納得して取り付けるために、疑問は解消しておくことが大切です。
では最後に、自宅に充電設備を取り付けるにあたって、よくある質問をみていきましょう。
電気自動車の充電設備の設置には、国や自治体からの補助金制度と地方自治体による補助金制度があります。国からの補助は、個人の戸建住宅は対象になっておらず、その対象は主に法人やマンション管理などの団体です。
マンションなどの共同住宅であれば個人でも申請可能ですが、申請にあたっては、マンションの管理組合や管理会社、オーナーなどの承認が必要になるため、必ず確認を取りましょう。対象の充電設備であれば、設備の購入費や工事費に対して補助金を受けることが可能です。
地方自治体の補助金も、多くは法人やマンション管理団体向けですが、個人宅も対象としている地方自治体もあります。お住まいの地域が個人宅を対象にしているかどうかチェックしておき、対象の場合はぜひ有効活用しましょう。
DIYに興味があれば、自分で充電用コンセントを取り付けてみようと思う方もいるかもしれません。しかし、充電用コンセントの設置は、第二種電気工事士以上の資格を持っていないと工事することはできません。
電気工事は、ひとつ間違うと感電事故や漏電による火災などにつながるため、必ず資格を持つ施工業者に依頼しましょう。専門的な知識と正確な技術が要求される作業だからこそ、信頼のおける業者を選ばなくてはなりません。
ガソリン車の給油はガソリンスタンド一択でしたが、電気自動車は外部で充電する以外に、自宅で充電するという選択肢が加わり、一人ひとりのライフスタイルに合わせた充電が可能になりつつあります。
なにより、電気自動車の普及はまだ始まったばかりです。この先、世界中のメーカーが電気自動車の開発を進めるなかで、さらに大きな進化を遂げていくことでしょう。充電時間が劇的に短縮されることも十分に想定できます。
日本でも「2035年までに乗用車新車販売で電動車100%」という目標の実現に向け、官民一体となって取り組んでおり、更なる進化が期待できます。
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