マンションやアパートへ、太陽光発電の導入を検討中の方もいるのではないでしょうか。電力価格の高騰により、少しでも電気代の節約につなげたいと考えるのであれば、太陽光発電は有効な手段のひとつです。
今回は、マンションやアパートに太陽光発電を設置する方法や、導入のメリット・デメリットを紹介します。また、初期費用や維持費などのコスト、補助金についても解説しますので、太陽光発電の導入に興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
マンションやアパートに太陽光発電を導入する際に得られるメリットには、以下のようなものがあります。
・屋根や屋上を有効活用できる
・電気代を削減できる
・余った電力を売却できる
・マンションやアパートの価値向上につながる
・緊急時にも電力が使える
ここでは、上記のメリットについて詳しく解説します。太陽光発電を導入する際の参考にしてください。
太陽光発電は、マンション・アパートの屋上スペースを有効活用できます。屋上は日当たりがよく、太陽光パネルの設置に最適な環境が整っています。発電によるメリットだけでなく、パネルが日差しを遮ることで、屋根の劣化を防ぐ副次的効果も期待できるでしょう。
太陽光発電で得た電力を共用部分や各戸で自家消費することで、電気代削減が見込めます。近年、燃料調達コストの高騰により電気料金の値上げが続いており、節電に取り組んでも電気代が上がっています。
しかし、太陽光発電なら発電した電力をそのまま使用できるため、電気代の削減が期待できます。また、自家消費分の電力には、燃料費調整額や再エネ賦課金などの追加コストがかからない点もメリットです。
太陽光発電を利用することで、売電収入を得られるといったメリットもあります。売電収入とは、発電した電力のうち自家消費せずに余った分を、電力会社に販売することで得られる収入のことです。
電力は貯蔵が難しく、蓄電池の併用がなければ、昼間に発電した電力を夜に使うことはできません。そのため、余剰電力を電力会社に買い取ってもらう仕組みが用意されています。
FIT制度(固定価格買取制度)は、2012年7月に経済産業省が開始した、再生可能エネルギーの普及を促進するための制度です。風力や水力、地熱など5つの再生可能エネルギーが対象となっており、一般家庭では太陽光発電がほとんどです。
FIT制度では、再生可能エネルギーで発電した電力のうち、自家消費されなかった余剰電力を、一定期間電力会社が法令で定められた価格で買い取ります。
太陽光発電は、再生可能エネルギーのなかでも比較的高い買取価格が設定されています。一般家庭に多い容量である10kW未満の太陽光発電の場合、買取期間は10年間です。
買取価格は年度ごとに見直されており、再生可能エネルギーの普及にともなって低下傾向にあります。しかしそれと同時に、たゆまぬ研究と技術開発によって年々ソーラーパネルの性能が大きく向上していること、また導入コストは下がっていることから、今後もFITは十分活用できるといえます。
太陽光発電を導入することで、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)におけるZEHマークの取得が可能になります。
BELSは、建築物の省エネ性能を評価する制度で、新築だけでなく既存の建物も評価・表示が可能です。このBELSで高い評価を取得することで、環境に配慮したマンションであることをアピールできます。
ZEHは、BELS評価において高い基準を満たした高性能住宅のことを指し、この認定条件のなかに太陽光発電設備が含まれています。ZEH認定されたマンションやアパートであれば、省エネ・創エネへの取り組みを効果的に示せるだけでなく、脱炭素や環境負荷の軽減といった実績も残せるでしょう。
さらに、環境価値の高い物件として売り出すことで、光熱費負担の少ない住まいを求める入居者を集められます。物件の価値が上がれば、家賃を高く設定しても入居者を増やせるだけでなく、退去リスクも軽減できるでしょう。
マンションに太陽光発電を導入すると、災害時の停電対策として大きな役割を果たします。台風や地震などで電力供給が停止した場合でも、太陽光発電を自立運転モードに切り替えることで、最低限の電力を確保できます。
さらに太陽光発電と蓄電池を併用すると、より柔軟な停電対策が実現できます。日中に発電した電力を蓄電池に貯めておけば、夜間や雨天時でも電気を使用できます。停電が長期化した場合でも日中の発電で電力を貯められるため、入居者は安心して暮らせるでしょう。
太陽光発電には、停電時に手動で切り替え操作が必要なものと、自動的に切り替わるものがあります。そのため、導入前にどちらのタイプなのかを確認しておくことが重要です。また、取扱説明書を確認し、切り替え操作の方法や、使用できる電化製品を把握しておきましょう。
太陽光発電にはさまざまなメリットがある一方、以下のようなデメリットも存在します。
・初期費用の高さ
・入居者の同意が必要
・全部屋へ電力供給が難しい場合がある
・追加工事が必要になる場合がある
太陽光発電を導入する際には、事前にこれらを把握しておく必要があります。以下で詳しく解説します。
太陽光発電は、初期費用の高さがデメリットとして挙げられます。経済産業省の「令和6年度以降の調達価格等に関する意見」によると、既存住宅に設置する場合1kWあたり平均27.8万円前後、10kW規模で278万円以上の設置費用が必要です。
2012年時点では1kWあたり48万円近い費用が必要であったことから比べると、設置にかかるコストは年々着実に削減されています。ただ、屋上や屋根の状況によっては補強工事が必要となり、必要経費が増大する可能性もあるでしょう。
一方、国や自治体の補助金制度を活用することで、コストを削減できます。できるだけ費用を抑えたい場合は、無料の見積もりや診断ができる太陽光発電業者に相談することも有効な手段です。
既存の賃貸アパートやマンションに太陽光発電や蓄電池を導入する際は、入居者の同意が必要です。工事の際は騒音が発生するため、入居者の理解と協力が欠かせませんが、なかには工事に反対される可能性もあるでしょう。
こうしたトラブルを防ぐためには、太陽光発電のメリットを丁寧に説明し、入居者の同意を得ることが重要です。マンション・アパート経営者にとっての利点のみならず、入居者への利点も重視のうえでプレゼンテーションを行いましょう。
とくに分譲マンションの場合、共用部分への設置には、管理組合の集会決議が法律で義務付けられています。採決までには時間がかかるケースもあるため、粘り強く交渉を続ける必要があるでしょう。
マンションへ太陽光発電を導入する場合、全住戸への電力供給が難しいケースがあります。発電量はパネル枚数に比例するものの、設置スペースの面積や形状によって制限を受けるためです。
また、各住戸への配線工事やパワーコンディショナーの設置で、初期費用がさらに膨らむ可能性もあるでしょう。
しかし、蓄電池と併用することで、太陽光発電のみの運用よりも運用効率を高められます。予算に余裕があり、効率的な自家消費を重視したい場合は、蓄電池との併用がおすすめです。
マンションに太陽光発電を導入する際、建物の形状によっては追加工事が必要となり、設置費用がかさんでしまうケースがあります。事前に専門家によるシミュレーションや見積もりをとり、費用を確認しておくことが重要です。
また、太陽光発電システムは、定期的なメンテナンスが欠かせません。屋根や屋上に設置された太陽光パネルは、風雨にさらされると汚れや劣化が発生します。技術開発によって年々汚れの付着しにくいパネルが開発されていますが、発電効率の低下を防止するには、定期的な清掃や点検が必要です。
また、一般的に太陽光発電には10年間の保証がついており、保証期間中はメンテナンス費用が無料となります。期間終了後は有料となるため、長期的な見通しが必須といえるでしょう。
太陽光発電の導入には、以下のような特徴を持っているマンションやアパートが適しています。
・低階層のマンション
・屋根に傾斜がついている
・賃貸のマンション・アパート
太陽光発電のメリットを活かすためにも、上記の特徴を把握しましょう。
低階層のマンションは、太陽光発電の設置に適しています。高層マンションでは、地上よりも強い風を考慮した取り付け方法や補強が必要となり、コストが増える可能性があります。
一方、高さ20m程度(7~8階建て)の低層マンションやアパートであれば、住宅と同様の設置工事で済むため設置費用を抑えられます。低階層のマンションであれば、スムーズな導入と高い採算性が期待できるでしょう。
屋根に傾斜がついていることも、太陽光発電に適したマンションやアパートの特徴として挙げられます。切妻屋根や片流れ屋根のような傾斜のある屋根は、住宅やアパートで一般的に採用されており、太陽光発電との相性がよいとされています。
傾斜のある屋根は排水性に優れているため、雨漏りのリスクを軽減できます。一方、陸屋根のような平坦な屋根では排水性が悪いため、セメントで固めたブロック架台を使用する方法もありますが、費用が増えることも考慮しなければなりません。
また、太陽光発電では、最適な方位と角度での設置が重要です。日本の環境では、太陽光パネルを30度前後の角度で、かつ真南に向けて設置することが理想的とされています。屋根の傾斜が30度前後であれば、発電量を確保できます。
太陽光発電システムを導入する際、オーナーが単独で所有している物件であれば導入の意思決定がスムーズに進みます。一方、分譲マンションのように多数の所有者がいる場合、建物の変更にはさまざまな手続きが必要となるため、時間がかかってしまうでしょう。
マンションやアパートの種類によって、太陽光発電の設置方法が異なります。ここでは、以下のマンションやアパートごとの設置方法を紹介します。
・新築マンション・アパート
・賃貸マンション・アパート
・分譲マンション
上記の建物ごとの方法を把握して、太陽光発電を運用していきましょう。
新築マンションへの太陽光発電の導入は居住者の許可が不要なため、設置がしやすいでしょう。建物の建築時に発電設備を屋上などに組み込むことで、効率的な運用が可能になります。
また、設計段階で架台やパネルの飛散・歪みを防止するための対策を講じることもできます。風の影響を受けやすい屋上や屋根でも、故障のリスクを抑えた運用が可能です。
さらに、太陽光発電とZEHを組み合わせることで、光熱費の削減だけでなく環境価値の向上も図れます。ZEHマンション・アパートであることをアピールすれば、省エネ・創エネへの関心が高い住人からも注目を集められるでしょう。
賃貸マンションやアパートへの太陽光発電の導入は、オーナーの判断で進められます。太陽光発電設備は、後付けでの設置工事が可能です。建物の耐久性や日照条件を確認して設計することで、十分な発電量を確保できるでしょう。
ただし、既存の入居者がいる場合、トラブルが発生しないよう太陽光発電の設置スケジュールや運用方針について各入居者に説明し、許可を得るようにしましょう。入居者の理解と協力を得ることで、導入をスムーズに進められます。
入居者が太陽光発電の設置を希望する場合、共有部分・専有部分を問わずオーナーの許可が必要です。オーナーは建物・敷地の所有者であり、設備の設置に関する最終的な決定権を持っています。
分譲マンションへの太陽光発電の導入は、賃貸マンションと同様に後付け設置となります。分譲マンションは、個人が所有する専有部分と、購入者全体で所有する共有部分に分けられます。屋上に太陽光発電を設置する際は、管理組合の会議での決議が必要です。
共有部分の電力をまかなうために設置する場合や、発電した電力を各部屋で利用する場合など、運用方法によって入居者の意見が分かれる可能性があります。
また、分譲マンションの入居者数が多ければ多いほど、意見の対立が生じやすくなります。太陽光発電の導入に積極的な入居者がいる一方で、設置に反対する入居者もいるケースもあるため、合意に時間がかかるでしょう。
住宅用太陽光発電システムの設置費用は、年々下降傾向にあります。経済産業省の「令和6年度以降の調達価格等に関する意見」によると、2023年度の新築住宅への設置費用は1kWあたり28.8万円となっています。
また、一般家庭で主流の3kW〜5kWの太陽光発電システムでは、初期費用として84万円〜140万円程度が必要です。
リフォームで太陽光パネルを後付けする場合、新たな配線工事などが必要となり、1kWあたり2.2万円ほどの追加費用が発生します。そのため、太陽光パネルの設置は、新築時に行う場合がコスト面では最もよいといえるでしょう。
太陽光発電システムは、ソーラーパネルやパワーコンディショナー、架台、各種ケーブル類などの機器を組み合わせて構成されています。長期的に運用するには、メーカーの取扱説明書に従い、設置者や有資格者・専門業者による定期的な点検・メンテナンスが欠かせません。
発電量の維持と安全性の確保のために、3〜5年ごとに1回程度の定期点検が推奨されています。経済産業省のデータによると、5kWの太陽光発電システムの点検費用は、2023年時点で平均4.7万円程度とされています。
点検では、製品の不具合や運転状況のチェックに加え、電圧測定や絶縁抵抗測定なども行われます。点検の結果次第では、設備の修理や交換が必要になることもあるでしょう。
こちらの記事では、太陽光パネルの寿命について解説しています。パネル劣化の原因や、寿命を延ばすコツについても取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
2021年度以降、国による太陽光発電単体での購入や設置、関連機器類への補助金制度は廃止されています。太陽光発電に対する国の補助金制度は、2014年に終了して以来新制度が立ち上がっていないのが現状であり、現在は各自治体による補助制度が主となっています。
しかし、2021年に新たに発表されたDER補助金(DR補助金)では、蓄電池の設置に対する補助金が用意されています。DERとは、分散型エネルギーリソースのことを指し、この技術を活用した次世代技術構築実証事業を通じて、国から家庭用蓄電池の設置に補助金が交付されます。
蓄電池の設置にて交付される補助金額は以下の通りです。
・蓄電池商品工事代の3分の1
・初期実効容量1kWhあたり3.7万円
商品次第では1kWhあたり最大9,000円の増額が可能となっています。また補助金の上限は60万円です。
ただし、DER補助金(DR補助金)の対象となるのは、すでに太陽光発電が設置済みの方、もしくは太陽光発電と同時に蓄電池を設置する方に限られます。
つまり、蓄電池単体や太陽光発電単体での補助金制度は廃止されたものの、太陽光発電と蓄電池を同時に設置する場合には、補助金を受け取れます。
太陽光発電は、マンションやアパートの屋上部分を有効活用でき、発電だけでなく日差しから屋根を守る役目も担います。また、太陽光発電による自家消費によって月々の電気代や燃料調整額、再エネ賦課金といったコストの削減も見込めます。
マンションやアパートの価値向上や災害によって停電した際も電力が使用できるといった点がメリットです。一方で、初期費用の高さや設置時に入居者の同意が必要な点に注意が必要です。設置の際は入居者へ十分な説明を行い、トラブルを避けながら設置を進めましょう。
弊社では、太陽光発電の導入を希望するお客様に向けて、設置工事を行っています。現地調査の結果を踏まえてお客様に適したプランを提供するほか、補助金の申請代行も行っております。太陽光発電を導入の際は、ぜひ弊社へお問い合わせください。